地域活性化は「夢」から始めてはいけない― 現在地を見ないワークショップが地域を迷わせる ―

地域活性化コンサルタントが主催するワークショップでは、
「地域資源を活かして、地域の夢を語ろう」
「10年後の理想の地域像を描こう」
といった、ワクワクする未来像が語られることがよくあります。

参加者は明るい未来を想像し、会場は盛り上がります。
しかし、その高揚感とは裏腹に、ワークショップ終了後、現実の地域は何も変わらない——。
こうしたケースは、決して珍しくありません。

夢に向かう旅で、最も重要なもの

夢や理想を描くこと自体が悪いわけではありません。
将来の「あるべき姿」を明確にすることは、地域活性化において重要な要素です。

しかし、旅に例えるなら、目的地だけを決めて出発点を間違えれば、目的地には到達できません。

地域活性化において本当に重要なのは、

  • 今、地域がどこに立っているのか
  • 何ができていて、何ができていないのか
  • 住民が日常生活で何に困っているのか

といった**「現在地」を正確に把握すること**です。

将来像を描くことと同じくらい、いや、それ以上に「現在地の把握」は重要なのです。

なぜコンサルタントは「現在地」を扱いたがらないのか

夢を語るワークショップは、楽しく、盛り上がります。
参加者からの満足度も高く、「良いワークショップだった」という評価も得やすい。

一方で、現在地を直視するワークショップは違います。

  • 人口減少
  • 高齢化
  • 買い物・移動の不便さ
  • 情報が届いていない現実
  • 地域活動を担う人の疲弊

こうした現実と向き合う場は、空気が重くなり、決して楽しいものではありません。
深刻な雰囲気になり、ワークショップとして「盛り上がらない」のです。

そのため、コンサルタントは無意識のうちに、「受けの良い夢の話」だけに寄りがちになります。

頑張っても届かない「夢」は地域の自信を喪失させるだけ

現在地を正しく知り、小さくても確実な改善を積み重ねた先にこそ、初めて「実現可能な夢」が見えてきます。

最初に大きな夢をぶち上げても、それはどれだけ頑張っても届かない**ただの「夢物語」**で終わってしまいます。
人は、最初から「どうせ無理だ」と感じる目標に対して、本気では動けません。

これは、やる気や根性の問題ではありません。
**人が継続的に行動できるかどうかは、「届きそうかどうか」**で決まるのです。

一方で、小さくても確実な成功体験を積み重ねていくと、地域に変化が生まれます。

  • 「少し良くなった」
  • 「やれば変わる」
  • 「自分たちにもできる」

こうした実感が、地域の中に自信を育てます。
この自信こそが、次の一歩を踏み出す原動力になります。

そして、自信が蓄積されてくると、初めて「もう少し頑張れば、あの目標に届くかもしれない」という現実的な希望が生まれます。

だからこそ、地域活性化の正しいプロセスは次の順序であるべきです。

  1. 現在地を明確にする
     ── 何ができていないのか、何が不安なのかを直視する
  2. 将来の安心・安全を確保する
     ── 生活の基盤を立て直す
  3. 小さな改善を積み重ねる
     ── すぐに成果が見える行動を選ぶ
  4. 成功体験を共有し、自信を育てる
     ── 「変えられる」という実感を地域に広げる
  5. その上で、大きな夢を描く
     ── 初めて「本気で目指せる夢」になる

この順序を飛ばして、いきなり夢を語るのは、地図も現在地も分からないまま、遠い目的地だけを指差すようなものです。

地域活性化とは、夢を語ることではありません。
夢に向かって、歩き続けられる状態をつくることです。

そしてその出発点は、いつも「今ここ」にあります。

現在地から目を逸らした地域活性化の末路

しかし、現在地を直視しないまま描かれた夢は、現実の地域との乖離が大きく、次第に住民からこう思われるようになります。

  • 「それは理想論だ」
  • 「うちの地域の実情を分かっていない」
  • 「結局、一部の人の自己満足ではないか」

その結果、住民は置き去りにされ、地域活性化そのものへの不信感が生まれます。
これは「地域活性化」ではなく、地域を舞台にした自己実現に過ぎません。

本当に地域を良くしたいコンサルタントとは

本当に地域を良くしたいと考えるコンサルタントであれば、まず地域住民に現在地と向き合ってもらうはずです。

  • なぜ今、困っているのか
  • なぜ当たり前のことができなくなっているのか
  • 何を最優先で改善しなければならないのか

それは決して楽しい作業ではありません。
しかし、その痛みを共有しなければ、現実的な一歩は踏み出せないのです。

夢は「現在地」の先にしか描けない

地域活性化において、夢を語ることを否定する必要はありません。
ただし、夢は現在地の延長線上にしか存在しないという事実から、目を逸らしてはいけません。

現在地を正しく知り、小さくても確実に改善を積み重ねた先にこそ、初めて「実現可能な夢」が見えてきます。

地域活性化のスタート地点は、未来ではなく、今ここなのです。